結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
第五章 永久に愛を誓って
まだ手が震えている。信用していた人に裏切られ、襲われたことはもちろん怖かったが、一番悔やまれるのは杏花を危険な目に遭わせてしまったことだ。
私ひとりでは、杏花を守り切れなかった。
手の震えは、杏花を失うのではないかという恐怖がまだ胸に焼きついて離れないからだ。
――理仁さんが来てくれなかったら、どうなっていたことか。
オーナーは警察に捕まり、私たちはその場で事情聴取を受けた。
とはいえ小さな子どもがいたこともあり、今日のところは手短に済ませ、詳しくは明日、杏花が保育園に行っている間にする予定だ。
警察が帰ったあと、私と理仁さんは一緒にドアを直そうとしたけれど――。
「これは……ダメだな」
ドアフレームと鍵が完全にひしゃげていて、直しようがない。
「業者に頼むしかない。菫花、ひとまず大家さんに連絡してくれるか」
「わかったわ」
大家さんに連絡し事情を説明すると、ドアを壊して怒られるかと思いきや、無事でよかったと心配してもらえて拍子抜けした。
――悪い人ばかりじゃない、本当に優しい人だっているわ。
オーナーの件で人間不信に陥りかけていた私は、手を貸してくれたマンションの住民や、大家さんの心遣いに触れ救われた。