結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
後日、業者を呼んできちんと補修することを約束し、電話を切る。

「ひとまず、ブルーシートと養生テープで目隠しをして、今日のところはうちにおいで」

「ですが――」

「あんなことがあった直後に、ドアの閉まらない家に住むつもりか?」

ふと杏花を見下ろすと、私の服をきゅっと掴んで不安そうな顔をしていた。杏花のためにも、危険は避けなければ。

かといって、鍵が直るまでホテルに泊まるようなお金もない。

「わかりました。お世話になります」

貴重品と数日分の衣服をまとめて、理仁さんの車に積み込む。

「杏花。しばらく、パパのお家にお泊まりだ」

「パパのおうちっ……!」

杏花は目をキラキラさせてチャイルドシートに乗り込む。

理仁さんの家は財務省庁舎から数駅のところにある高層マンションの上層階。

杏花は初めて乗る高層エレベーターに大興奮。遊園地を思い出したらしく「かんらんしゃ?」と尋ねるが、理仁さんは「ちがうよ、エレベーターだ」と説明する。

部屋に着いたあとも、広々とした玄関と長い廊下に感動しきりだ。

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