結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
力加減でボールの位置をコントロールしているとでも? ボールだけでなく、ルーレット自体も回っているというのに。

しかもあれだけたくさん出目がある中で、たったひとつを選び取れるなんて神業としか言えない。

「彼らの仕事は、客に大勝ちをさせず、大負けをさせないこと。ついでに、お金を巻き上げられそうな人にターゲットを絞って、適度に巻き上げること」

君みたいな、と指をさされて、顔が真っ赤になった。まるで、世間知らずの箱入り娘だと見透かされたようで恥ずかしい。

「もちろん、さっきみたいな無謀な賭け方をすればこうなる」

「では、負けると知っていて賭けたと?」

肩をすくめておどける彼に、開いた口が塞がらない。いったいいくら失ったと思っているのだろう……。

「どうしてギャンブルなんて? 賭け事慣れしているようには見えないが」

「……その、やったことのないことをやってみようかと」

「社会勉強のつもりかな?」

私が沈黙していると、図星だと察したようで、「まあ、いい勉強になったね」と控えめに返事をくれた。

「あなたこそ、答えになっていません。どうしてあんなことを?」

「冷静になっただろう?」

「その代わり、あなたがお金を失ってしまいました」

「君の社会勉強に貢献できたなら、安いものだよ」

柔らかな笑みを浮かべて答えを濁す。

彼はあの金額をなんとも思わない資産家か、あるいは、相当なおひとよしか。
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