結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
無神経に誘ってしまったけれど、彼こそ家族やパートナーが待っているのではないだろうか。もしも奥様のいる男性を食事に誘ってしまったとしたら大変だ。

今さら慌てて確認すると、彼は涼しい顔をして「問題ない」と答えた。

パートナーはいないということかしら?

なんとなくホッとしているのを不思議に思いながら、彼に「どうぞこちらへ」と案内する。

私はレストランやバー、カフェなどが入っているメインデッキ、二階、三階を通り越し、客室のある六階に向かう。

「レストランに行くんじゃないのか?」

「レストランの個室は、今から予約するのは難しそうなので。騒がしいところより、部屋で食べた方がゆっくりお話ができるでしょうから」

なにしろ航行初日だ、レストランも混雑しているだろう。だったら、部屋に食事を運んでもらった方が落ち着いて食べられる。

彼は「……そう」とどこか物言いたげに、けれど特に反論もせず、私のあとについてくる。

少し不思議に思いながらも、私は自分の部屋を案内した。

「そういえば、お名前を聞いていませんでした」

部屋に招き入れて尋ねると、彼はふっと息をついた。

「理仁だ」

「理仁さん……」

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