結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「確かに不用心でしたけれど、私の見立てに間違いはありませんでした。あなたは悪い人ではなさそうですもの」

「さあ、どうかな。これから君を襲うかもしれない」

「そう思っているのなら、とっくに襲っているでしょう?」

「……君には負けたよ」

理仁さんが毒気を抜かれたような顔で肩をすくめる。

「負けたのは私にではなく、カラーベット(赤 or 黒)に――」

「そういう意味じゃない。なんていうか……降参だ」

そう言って理仁さんは両手を挙げる。

よくわからなかったけれど、とにかく私は彼をもてなそうと、ルームサービスの一覧に目を走らせた。

「理仁さんは食べたいものはありますか? 日本食レストランはもう召し上がった? でも、せっかく旅行に来ているのだから、ヨーロッパらしいメニューがいいでしょうか……」

「任せるよ。好き嫌いもアレルギーもないから、好きに選んでくれていい」

お言葉に甘えて、私はフレンチのコースと甘めのシャンパンを頼んだ。

ディナーを味わいながら、他愛のない話をたくさんする。

仕事の話、日常の話、家族の話。なぜこの船に乗ることになったのか。

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