結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
男性とここまで腹を割って話すのは初めてで、私はこれまでに味わったことのない強い親近感を覚えていた。

「じゃあ、理仁さんはお兄様と一緒にこの船に乗っているんですね」

「ああ。兄の仕事に付き合うかたちでね。俺もこっちで働いていたから、ちょうどよかった」

「でも、理仁さんは財務省にお勤めなんでしょう? どうして日本ではなくヨーロッパに?」

「財務省が扱うのは日本経済だけじゃないよ。為替や関税による国際的な連携はもちろんだけど、途上国への開発援助なんかもしている。とくに俺はこの一年、EBRDに赴任しているから」

耳慣れない単語に頭がフリーズした。

「EB……?」

「EBRD、欧州復興開発銀行」

「銀行……なの?」

「まあそうだけど、日本の銀行のようにひとつの国や企業が運営しているものじゃない。厳密には国際開発金融機関にあたる」

――どうしよう。ピンとこないわ……。

またひとつ世間知らずを露呈してしまった。やはり私には社会勉強が必要なようだ。無知がこんなに恥ずかしいことだとは思わなかった。

「……ところで、理仁さんっておいくつですか?」

「二十八だ」

五つも年上だったことに救われた。

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