結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「財務省で働いているというだけでも縁遠い方なのに、家柄までよかったら、とてもお友だちにはなれないでしょう?」

私が心から安堵しているのを見て、彼は呆然とする。

「そこはがっかりするところじゃないのか? コネクションを得るチャンスがなくなったんだから」

「そんなつもりであなたをここに呼んだわけじゃありませんから」

答えると、彼は苦々しく額を押さえてシャンパンを口に運んだ。

「やっぱり君は、社会勉強すべきだな」

「なにかいけませんでしたか?」

「いや、褒めたんだよ」

よくわからないけれど褒めてくれたようだ。私が「ありがとうございます」と笑みを送ると、彼は「やっぱりかなわない」とグラスのシャンパンを飲み干した。

「それで、お兄様はこの船でどんなお仕事を? これは観光用の船ですし、国連ともあまり関わりがなさそうに思えますけど」

すると、彼は突然神妙な顔をして、低い声で語りだした。

「……ここだけの話なんだが、実は兄は国連のテロ対策ユニットに所属していて、テロリストの資金供給源と思われる資産家を見張っているところなんだ」

「え」

思いもよらない話に発展し、グラスを持つ手が止まる。

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