結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「その資産家がまさに、君が先ほどカジノで会話していた男性――」

「あの挑発してきた眼鏡の紳士が……!」

私は口もとを押さえ息を殺す。あの紳士がテロリストの一味だったなんて。

愕然としていると、理仁さんは顔を伏せ、しばらく黙り込んだあと「……くっ」と肩を震わせた。

「理仁さん?」

「……ふっ……くく」

「……笑ってます?」

「ごめん。まさか信じるとは思わなくて」

嘘だったの!? 私がぽかんと口を開くと、彼はとうとう堪えきれずお腹を抱えて笑い出した。

「騙したんですか!?」

「兄が国連職員なのは本当だけど、眼鏡の紳士は一般人だよ」

むうっと頬を膨らませると、彼は弁解するように語りだした。

「兄は仕事柄、コネクションが広くてね。このクルーズも、知人に招待されたらしい。ほかに誘う相手もいなかったから、同じ欧州にいた俺を呼び出したそうだ」

「では、もしかしてお兄様が待ってらっしゃるんですか? ごめんなさい、引き留めてしまって――」

「いや、大丈夫。向こうも好き勝手しているから。その……あまり褒められたことじゃないんだが」

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