結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
理仁さんはどこか気まずそうに目を逸らす。その意味に気づけないまま、次の言葉に意識が持っていかれる。

「それに兄弟だからって、いつもべったりくっついているわけじゃない」

一緒に旅行に来たのに行動は別々だなんて、兄弟って意外とドライなのねと私は変な感心をしてしまった。兄弟も姉妹もいない私にはよくわからない感覚だ。

「それなら、もう少し話を聞かせてもらっても? もちろん、迷惑ならまた今度にしますけれど」

この多国籍の船の中で、せっかく出会えた日本人、しかも同世代の男性。加えて社会人としては大先輩。彼から聞きたいことは山ほどある。

「かまわないよ。このシャンパンがなくなるまで」

「じゃあ、ゆっくり飲みますね。あなたがなかなか飲めないように、たくさん喋らせてしまうかもしれません」

彼は笑って「悪い子だな」と私を叱る。

酔った勢いもあって私は彼を質問攻めにしてしまったけれど、彼は嫌な顔をせず、ひとつひとつ真剣に答えてくれた。

どれだけ時間が経っただろう。シャンパンのボトルが空いてしばらくする頃。

「君の質問は、まだ尽きない?」

とくに嫌がっているというふうでもなく、彼が尋ねてきた。

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