結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
私たちは一度別れ、それぞれの部屋でシャワーを浴び、身支度を整えた。

二階にあるカジュアルなカフェレストランで待ち合わせをして、再びやってきた彼は、白いシャツにネイビーのスラックスを合わせた爽やかな身なりをしていた。

今日は前髪を下ろしていて、格好よさの中にあどけなさが宿っている。

乗客にはたくさん紳士がいて、中には目を引きつけるような素敵な人もいるけれど、その中でも彼はとびきり秀麗で魅力的だった。

こんなに素敵な人と一晩を過ごした――そう考えるだけで顔を覆いたくなってしまう。

「今日の予定は? 船はリヴォルノの港に寄るが、観光はする?」 

リヴォルノはイタリアのトスカーナ州にある港町だ。そこからフィレンツェ観光へ行く人も多いみたいだけれど、それなりに距離があるので移動に手間取りそうだ。

観光は後日、モンテカルロやマルセイユなどをメインにして、リヴォルノは軽く散策して船に戻ろうと考えていた。

「少しだけ港街を見て回ろうと思っています」

「ひとりで?」

「もちろん。そのつもり、でしたけれど……」

一緒に来てほしいなんて、厚かましいことは言えない。

そもそも、自立を促すためのひとり旅だ。ここで彼に甘えてしまっては本末転倒になる。

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