結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「菫花をひとりで外に出すのは、すご~く心配だ」

理仁さんは頬杖をつき、目を据わらせて言う。昨夜、あれだけ不用心なことをしてしまったのだから、心配するのも当然だろう。

「でも、そのための旅行ですから」

「菫花のご両親は、君になんでもできるようになってほしいとは考えてないと思う」

「え……?」

遠回しな言葉に、私は首を傾げる。

彼はチェアに深く座り直し、あらたまって切り出した。

「できることとできないことがあるのは、誰でも当たり前だ。できないことに直面したとき、誰かに助けを乞うのも立派な解決方法だ。ご両親は、君に上手に世の中を渡ってほしいのだと思うよ」

彼の言葉に導かれ、これまでとは違った答えに辿り着く。

父もきっと仕事をする上で多くの人の手を借りているはずだ。経営者だからといって、すべてを詳細に把握しているわけではない。

わからないことは現場の人間に聞く。必要があれば専門家を呼び助言をもらう。

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