結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
それから三日間、私たちは船の中でも外でも幸せな時間を過ごした。

船を降りての観光や、ショッピングはもちろん、船の中ではシネマやエステ、プールだって満喫した。

ふたりでいると、すべてが新鮮で楽しい。

夜は私の部屋で愛を交わして眠りにつく。こんな贅沢な日々があってもいいのかと怖いくらいだ。

理仁さんがずっと一緒にいてくれることが嬉しい。でも――。

――船を降りても、一緒にいてくれるかしら?

船旅が終わりに近づくにつれ、そんな不安がじわりじわりと湧き上がってくるようになった。

五日目の夜のことだ。理仁さんと一緒に船内のバーを出たところで、背後から声をかけられた。

「理仁」

涼やかな男性の声に振り向くと、そこには一組の男女がいた。

男性は背がすらりと高くスーツ姿。理仁さんとそっくりな整った顔立ちをしている。

「兄さん」

理仁さんが少しだけ緊張した声をあげる。

理仁さんのお兄様は、理仁さんより少し大人びた笑みを浮かべ、隣の女性の腰に手を回した。ネイビーのイブニングドレスを着たグラマラスな美女だ。

「いつ部屋に行ってもいないから、どうしているのかと思っていたが。そちらの女性とずっと一緒だったのか?」

「兄さんこそ。素敵な女性とご一緒のようだ」

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