結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
私も驚いたけれど、煌仁さんも目を丸くしている。

「警戒しすぎだろう?」

「兄さんはスキンシップが過剰な節があるからね」

「さすがにレディのエスコート中に別の女性に手を出すほど軽薄ではないよ」

そう言ってネイビーのドレスの女性を抱きよせる。彼女は不信感を煽られたのか、ちょっぴり不満顔だ。

「綿来さんというと、鉄鋼業の?」

お兄様は私の苗字に聞き覚えがあったのだろう。『綿来製鉄』といえば、日本有数の高炉メーカーだ。

高炉メーカーとは、数ある鉄鋼メーカーの中でもとくに溶鉱炉を所有する企業のこと。大規模な施設が必要となるため、日本には四社しか存在しない。

近年は環境によいとされる電炉が増えてきてはいるが、生産量で見ればまだまだ高炉が圧倒的だ。鉄鋼業界のトップと言って過言ではない。

「はい。綿来製鉄は、父の会社です」

「そうか。理仁、素敵なお嬢さんを見つけたね。彼女なら祖父のお眼鏡にかなうかもしれない」

なんのことを言っているのだろう?

不思議に思い理仁さんを見上げると、彼は「なんでもない」と冷ややかに言い放ち、話を逸らした。

「それで、綿来さんはプラチナスイートに?」

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