結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「とんでもない。私はゴールドです」

「だったら、理仁の部屋に泊まればいいのに」

さらりと言い放たれ、私は「え?」と声をあげる。理仁さんは煌仁さんと一緒にクラシックスイートに泊まっているはずでは?

「ああ、安心してくれ。俺と理仁は、プラチナにそれぞれ部屋を取っているから。男同士で同室は気持ち悪いだろう?」

私は愕然とする。プラチナとゴールドは、ランクこそひとつしか違わないが、値段は倍以上の開きがあり、身分審査もある。

大富豪や世界的な経営者しか泊まれない、最上級ランクの部屋だ。それを二部屋も?

そこでようやく私は、藤ヶ音という名字の出所を思い出した。

藤ヶ音グループといえば、自動車製造を中心とした世界的なグループ企業で、ほかにも金融、情報通信、エネルギー事業など手広く扱っている。

とくにFIJIGANEの自動車といえば、世界販売台数トップ。経営者は資産家としても有名で、常に長者番付に名を連ねる有名人だ。

綿来製鉄もそれなりに大きな会社だけれど、藤ヶ音グループとは格が違う。

もし彼が藤ヶ音家の人間であれば、プラチナスイートに宿泊しているのも頷けるけれど――。

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