結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
――どうして彼はクラシックスイートに泊まっているだなんて嘘をついたのかしら。身分を隠そうとしていた?

「君たちの邪魔はしないよ。俺も彼女と楽しみたいからね」

煌仁さんはそれだけ告げると女性の肩を抱き、「いい夜を」とひらひら手を振りながら立ち去っていく。

その場に残された私たちは、どこか気まずい。理仁さんは隠し事をしていたやましさからか、私と目を合わせてくれない。

このまま沈黙していても埒が明かないと思った私は、ストレートに尋ねることにした。

「理仁さんは、あの自動車メーカーの――」

「家業を継ぐ気はないんだ。あくまで財務省職員だよ」

よほど資産家と思われるのが嫌なのか、理仁さんは頑なに否定する。

それでも彼の出自が変わるわけではない。プラチナスイートに泊まるような〝選ばれた人間〟であることは事実だ。

官僚というだけでもすごいのに、そんな良家の生まれだったなんて。

だが少なくとも理仁さんは、私に素性を知られたくなかったみたいだ。

「部屋に戻りましょうか」

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