結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
両親は大企業の経営者で、私はなに不自由なく育てられた。

学校への送り迎えには車が用意されていて、電車通学などしたこともない。

アルバイトも教会のボランティア程度しか経験がなく、社交もすべて親同伴。ひとりでなにかをすることがなかった。

大学を卒業したあとは、花嫁修業と称して家で華道や茶道、マナー教育やお料理などを習っていた。

かといって、誰かに嫁ぐ予定があるわけでもない。両親いわく、私にぴったりな最良の花婿が現れるまで待っているのだそう。

だから私は正直言って、とても世間知らずだ。このままではいけないと、私自身が一番感じていた。

社会に出ることなく家庭に入るとしても、もう少し世の中を知っておくべきだ。

危機感を覚えた私は、働きたいと訴え、両親が経営する会社に就職させてもらうことになった。今年の四月――来月から、私は晴れて社会人になる。

その前に、ひとつ『社会勉強』をしてきてはどうかと両親に提案された。

それがこの豪華客船ひとり旅。自立する練習にもなるし、乗客はみな資産家や経営者などそれなりに地位のある人間だから、良質な出会いもあるだろう、と。

――両親はもしかしたら、このクルーザーの中で素敵な男性との出会いを期待しているのかもしれない。

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