結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
生まれたときの大きさは、成長においてそれほど問題にならないのだと、今ならわかる。あの頃の不安は杞憂だった。

「生まれたばかりの頃は、一日中泣いているような赤ちゃんでした。きっと私の不安が伝わっていたんでしょう」

泣いていたのは私も同じだ。幸せにしてあげられないかもしれないと嘆いていた。

もちろん、今はそんな弱気なことは考えていない――考えないようにしているけれど。

「その不安は、きっと父親がいなかったからだよな」

ふと沈んだ理仁さんの声に、彼を責めるような言い方になっていたかと慌てる。

「そういう意味で言っているのでは――」

「すまない。俺がもっと早く君に気づけていたら――」

「理仁さんが謝ることではありません」

理仁さんは悪くない。子どもができたことを黙っていたのは私だ。産むと決めたのも私。

そのことで理仁さんが責任を感じる必要はない。

「そもそも、あなたの子どもじゃありませんし」

慌てて言い添えると、理仁さんはまいったように苦笑した。

「でも、私が笑顔でいるよう心がけたら、杏花がグズらなくなったんです。今ではとっても幸せそうでしょう?」

チャイルドシートの上でうきうきしている杏花に目を向ける。

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