結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「……とにかく、杏花はとってもいい子なんです」

隣に座る杏花の膝を撫でながら無理やり話を締めくくる。

理仁さんはバックミラーをちらりと覗いて「そうか」と満足げに頷くと、再び運転に集中した。



遊園地の駐車場に車を停めて、トランクに畳んでおいたベビーカーを出す。

しかし、杏花は乗車拒否。遠くに見える観覧車やジェットコースターに興奮して、自分で歩くと言い出した。

ベビーカーには杏花の代わりに荷物を載せ、カート代わりにして押す。

「俺が押していくから、菫花は杏花の手を」

「ありがとうございます」

ベビーカーは理仁さんにお任せして、私は杏花の手を引いて入口まで歩いた。

荷物に気を配らなくて済むって、こんなに楽なのかと感動する。いつもは右手にベビーカー、左手に杏花とせわしないから。

「ママー! あしょこ、いきたい!」

「杏花、おてては繋いでおいて。迷子になっちゃうわよ」

小走りの杏花に引っ張られるようにしてついていく。

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