結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
そんなんじゃなくて、と私は首をぶんぶん横に振る。杏花が一歳くらいのとき、抱っこのしすぎでよく腱鞘炎になっていたことを思い出したのだ。加えて腰も痛かった。

「軽いから大丈夫だ。菫花、ちょっと手伝って」

理仁さんはしゃがんで、頭を前に突き出す。肩に杏花を乗せてやると、足を掴んでゆっくりと状態を起こした。

「しゅごい~!」

杏花は理仁さんの頭にしがみつきながら、目をキラキラさせている。

「しゅっぱちしんこー」

「う……杏花、それじゃ前が見えない……」

理仁さんの目の上にある手をずらし「ここをぎゅっとしててね」とおでこのあたりに置くと、杏花は「うん!」と大きく頷いた。

「しっかり掴んでるんだぞ」

「あーい!」

杏花を肩に乗せて歩き出す理仁さん。そのあとを私はベビーカーを押しながらついていく。

肩から落ちてしまわないか、どきどきしながら見守っていたけれど、杏花は思った以上にしっかりと捕まってくれる。

しばらく歩くと、幼児用のアトラクションがたくさんあるエリアに辿り着いた。

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