結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
私たちはベビーカーをアトラクションの入り口に置き、園をぐるりと巡る高架鉄道に乗り込む。大人も楽しめる大きな汽車で、窓からは園内が一望できる。

車窓から景色を眺めていると、杏花は指をさし「みてみてー!」とはしゃいだ。

「ももか、あえものゆー!」

「メリーゴーラウンドだな。じゃあ、次はあれに行こう」

「あえも、あえもー!」

「観覧車か? 高いぞー?」

杏花と理仁さんがすっかり打ち解けている様子を見て、私は驚きつつも安心した。

杏花は人見知りとまではいかないものの、それなりに警戒心はある。

それがこんなに早く懐いてしまうなんて。肩車の効果は大きかったようだ。

「菫花は?」

ふいに尋ねられ、私は「えっ」と声を裏返らせた。

「乗りたいものとか、ないのか?」

「私は……」

杏花を楽しませることに必死で、自分がなにをしたいかなんて考えてもみなかった。

困ったように目線を漂わせると、ふと、下を歩く親子連れがソフトクリームワゴンに並んでいるのが見えた。

「あれが食べたいです」

「よし。じゃあ、メリーゴーラウンドと観覧車の次は、ママのソフトクリームだ」

「ママのとっとくいーむ!」

杏花が手を挙げて復唱する。微笑ましいふたりの様子に、私は思わずふふっと笑ってしまった。



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