そっと、抱きしめたい。
金曜日の朝。
いつもと違う天井。
(あ、そうだ。昨日、あのまま渚の家に泊まったんだった)
渚は、付き合って二年のオレの恋人。
オレより二つ年上で、29歳。
働いている会社は違うけれど、会社員という大きな括りでよくお互いの仕事の話をする。
「うーん、秀ちゃん、今って何時?」
ベッドの中から渚の、少しだけかすれた眠そうな声。
「六時になるよ。渚、起きよっか」
オレは柔らかい毛布をめくって、渚の顔を覗きこむ。
「……眠い」
渚はボーっとして、まだ起きようとしない。
うとうとしつつ、めくった毛布をもう一度被ろうと、片手で探っている。
「遅刻するよ?」
そう言って、渚の頬にキスをした。
「……うーん、もうちょっとだけ、このまま……」
寝言みたいにムニャムニャ言いつつ、渚は寝返りを打った。
オレの胸のあたりで、顔をすりつける。
……可愛い。
本当は甘やかしたい。
オレだってずっと渚といたい。
でも。
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