そっと、抱きしめたい。
「だめ。起きよう?」
心を鬼にして、オレはベッドから起き上がった。
渚は「ケチー、鬼ー」と言いながら、でもベッドから起きて、メガネをかけた。
ふたりで簡単な朝ごはんを作って食べた。
オレは渚の部屋に置かせてもらっている替えのシャツを着て、簡単な身支度を始める。
「ねぇー、秀ちゃーん」
洗面所から渚の声。
「何?」
洗面所まで行くと、そこには「お仕事モード」な顔つきの渚が居た。
メイクが終わって、コンタクトレンズをして、鏡の前でピアスを付けている渚は、
「今夜って何かある?」
と、オレを見ずに尋ねた。
(さっきまで寝ぼけていた人と同一人物とは思えないなぁ)
と思いつつ、
「予定は何もないよ」
と、答える。
「じゃあ、ここに帰ってきて?昨日のお礼も兼ねて、ご飯作る!」
渚と鏡越しに目が合った。
「わかった。ありがとう」
と言って、
「もう平気?」
と聞いてみた。