美しきハイスペ御曹司は、今日も彼女を溺愛する
本当は恐ろしい神威くん
『神威。
久しぶりに会おうよ?』

ある日の午後。
学食で、季帆を待っていた神威のスマホにある人物から連絡が入っていた。

「やだ」

『はい?会って話したいこと━━━━━━』

「だから!やだ!」

『どうした?
“やだ”なんて言ったことないだろ?』

「季帆ちゃんに、嫌われたくないから。
今、季帆ちゃんと一緒に住んでるから、会うってなると話さなきゃいけないでしょ?
乱磨(らんま)のこと」

『あー、十河 季帆。
地味~な女だよなぁー』

「は?」

『でも、よく見るとなんか可愛いな!
この、ブルブル震えてる姿とか!
小動物みたいで』

「え……乱磨、何、言ってんの?」

『ちょっと待ってな?
━━━━━━威く…か…い…く…助け、て…』
消え入りそうな声が、神威の耳に入ってくる。

これは、夢?
僕の耳、おかしくなったのかな?
今、確かに……季帆ちゃんの声が聞こえた……

「季帆…ちゃん?」

『ほら、もっと大きな声で助けを呼ばねぇと、聞こえねぇよ?
地味子ちゃん!』
『…………はぁはぁ…助け…』
必死に助けを求めようとしている季帆。

神威は、スマホを握りしめた。
ピキッと音がして、スマホの画面にヒビが入る。

それ程までに、神威は怒りに震えていた。

「乱磨」
神威の可愛らしい声が、黒く落ちた。
『んー?』

「今から行く。何処にいるの?」

『いつものとこ~!』

「わかった。
季帆ちゃんに、それ以上、手を出すなよ?」

『フフ…そうだなぁー、15分だけ待ってやる。
お前なら、楽に来れるよな?
“黒い神様”』


一方の季帆━━━━━━

講義室で助教授を待っていると、見慣れない男が二人入ってきて、有無を言わさずに腹を殴られた。
あっという間に気絶し、季帆は男に抱きかかえられて講義室を出ていった。

気がつくと、何処かの店にいた。
テーブルや椅子が無造作に散らばっていて、潰れた後の店舗のようだ。

「おはよ!」
「え?だ、誰!?」

「乱磨ー!
昌磨のいとこ~」

「え?昌磨くんの?」

「そ!似てるでしょ?」

「確かに…」

「あとー“チーム・雷雲(らいうん)”の総長~」

「え………」
昌磨のいとこと聞いて、少し安心していた。

しかし“雷雲”と聞いて季帆は、途端に震え始めた。


“チーム・雷雲”と言えば、この辺では知らない人はいない程の有名人だ。

とても喧嘩が強く、負けなしの軍団。

不特定多数の人を狙うような卑怯なことはしない。
だが、とても残忍な軍団だ。

雷雲に喧嘩をふっかけた不良達が、顔の原型がなくなる程なぶられたことがあるという事実があるくらいだ。
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