美しきハイスペ御曹司は、今日も彼女を溺愛する
「あ…あ…」

「大丈ー夫!何もしないから」

「え?」

「俺が用があるのは、君の彼氏!」

「神威…くん…?」

「そ!西洞院 神威!
知ってる?
神威が、俺達の世界で何て言われてるか」

「え……」


意味深に微笑んだ乱磨は、神威に電話をかけた。
「━━━━━神威。
久しぶりに会おうよ?」

━━━━━━━━
━━━━━━━━
━━━━━……

『━━━━━━』
「フフ…そうだなぁー、15分だけ待ってやる。
お前なら、楽に来れるよな?
“黒い神様”」

「あ、あの…く、黒い神様って……」

雷雲と同じくらい有名な人物がいる。


“黒い神様”
今では伝説化していて、季帆はその人物のことは実在してないと思っていた。
かなり喧嘩が強く、しかもいつも“たった一人で”戦うのだ。
その表情、雰囲気、周りを包む空気……
全てが黒く淀んでいる。

だから“黒い神様”と呼ばれている━━━━━

「んー?あー、神威のこと!」

「嘘……でしょ…?」

「やっぱ、知らないんだぁー
俺が唯一、勝てない男だよ!」

「え……?」
(雷雲の総長さんが、勝てないって……)

「神威は、一人で100人相手とか平気でするからね。
凄くない?(笑)」

(え?え?“あの”神威くんが!?)

物腰が柔らかくて、声も甘くて、いつも笑っている天使みたいな男性。

男性と言うより、可愛い少年のような人。

そんな人が、残忍な軍団のトップより強い!?
信じがたいことだ。


「━━━━━うーん。もうすぐ、10分経つなぁ…
もうそろそろかな?
………ちょっと地味子ちゃん、ごめんね~」
「え……
━━━━━━━キャッ!!!?」

急に乱磨に押し倒された、季帆。
起き上がろうとするが、ビクともしない。

「無理、無理!
こんな細っい腕じゃ、全く動かないよ?」
「離し、て…くださ……」

「だから、大丈夫だって!」
「え?」

「何もしないから!
押し倒してるだけで、十分!
おっ!このネックレス、神威から?」
「は、はい。
付き合い始めた時に、神威くんがプレゼントしてくれて」
「ふーん。ペア?」
「はい」
季帆のネックレスに触れ、チャームを指で転がす乱磨。

「………」
「………」
押し倒された状態で、見つめ合う二人。

(あ…傷だ……)
乱磨のこめかみに古傷があり、それを見つけた季帆。
無意識に、傷に触れていた。

「ん?」
「傷…」

「あー、これ?
神威に殺られたの~」
「え……神威…くん…に…?」

「しかも!素手で!」
「嘘…」


「ほんと!
……………てか!地味子ちゃんは、神威の何を知ってんの?」

信じられない思いで見ている季帆に、乱磨の視線と言葉が鋭く刺さった。
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