美しきハイスペ御曹司は、今日も彼女を溺愛する
「え………」

「あいつの19年間を知らないでしょ?」

「それは……」

「確か……一年くらいだよな?交際期間」

「はい」

「俺は、14年」

「………」

「14年、見てきた。
あいつが、御曹司ってことでどんな目に遭ってきたか。
汚ない大人に媚をうられ、親には利用されて、絶望してきた。
当時、よく言ってた。
“昌磨や大成、乱磨達とバカやってる時が、一番生きてるって感じする”って。
確かに暴力はいけねぇことだが、そうしないと生きていけなかったんだ」

乱磨の目が、切なく揺れていた。

「………」
季帆の目から、涙がこぼれた。

「え……なんで、君が…泣くの…?」

「わ、わかんない…
ただ、神威くんのこと思うと……涙が……」

「純粋、なんだね。
………………季帆って…」

「え……名前…」

ゆっくり、乱磨の顔が近づく。
「………」
「え?え?乱磨…さ━━━━━━」


その時━━━━━━

ガァァン!!!!
ドアを突き破り、男が吹っ飛んできた。
吹っ飛んできた男は、顔が腫れあがっている。

「え?」

「おっ!?12分か!流石だな、黒い神様!」

ドアの方を見ると、神威が立っていた。

“本当に神威くんなの?”
と思う程、表情、雰囲気が別人のように黒く染まっていた。

「乱磨」

「んー?」

「そこ退けよ」

「やだー!
今、季帆にキスしようとしてたのにぃ」

「は?」
更に雰囲気が黒く染まる。

季帆は、あまりの恐ろしさに恐怖で固まっていた。

「だってー季帆って地味って思ってたけど、結構可愛い顔してんじゃん!」

「お前、早く、季帆ちゃんから離れろよ」

「怖ーい!!
愛しの季帆ちゃんが、怖がってるよー?」

「うるさいよ」
ゆっくり乱磨の方に向かう、神威。
ザン!!と雷雲のメンバーが立ち塞がった。

「神威。
季帆を返してほしいなら、こいつ等倒してこいよ!
1分で!
1分経ったら、季帆の口唇いただきまーす!
…………あ!俺、季帆に興味持っちゃったから、キスだけじゃ終わらないかもー?」

神威が、雷雲のメンバーを蹴散らしていく。
しかも神威は、無傷だ。
無駄な動きが一切ない、俊敏な動き。

「見ててよ。
これが………西洞院 神威だよ」
乱磨が、季帆に耳打ちする。

見ててよって、見たくなくても見てしまう。
こんな神威くん、見たくないのに………

身体が固まって、動かない。

季帆はただ…何もできず、神威を見ていた。
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