美しきハイスペ御曹司は、今日も彼女を溺愛する
「━━━━━おっ!神威、あと5秒だよ~
間に合わないじゃーん!
5、4…3━━━━━━」
組み敷いた季帆に顔を近づける、乱磨。

「ら、乱磨…さ……」
季帆は、ギュッと目を強く瞑った。

「2…い━━━━━━」
フッ……と身体が軽くなったのを感じた季帆。
もちろん、口唇に何も触れられていない。


「━━━━いってぇぇぇーーー!!!!」
乱磨の叫び声で、目を開けた。

地面に、乱磨が転げ回っていた。
そしてその乱磨を、神威が凄まじい形相で見下ろして睨んでいた。

「さぁ、乱磨。
どうされたい?
乱磨の望み通りに、なぶってあげるよ?」

「いてぇーよ!
ちょっとした、冗談じゃん!
季帆に、神威のことを教えてあげたかったの!!」

「は?
もう、季帆ちゃんを傷つけないって約束したんだ。
なのに、また傷つけた。
絶対、許さない!
冗談では済ませないよ」

「そんな怒るとこ?
そんなマジなの?季帆のこと」

「うん、マジだよ。
季帆ちゃんは、僕の大切な人。
絶対誰にも渡さないし、一生守るって決めたんだ」

「悪かったよ!」

「は?謝って済む問題じゃない」
神威が、乱磨に殴りかかろうとする。
「━━━━━あ、あの!!神威くん!!」
そこに、季帆の声が響いた。

「あ?」
「あ…」
(こ、怖い…
でも、ちゃんと伝えなきゃ!!)
怒りが収まらない神威。
つい、季帆を睨み付けてしまう。

「わ、私…私ね!」

「━━━━ちょっと待って!!」
「え?」
神威が、季帆の言葉を制した。

そして、自分で自分の頬をおもいきり殴ったのだ。
ペッと血を吐く。

「え………えー!!?か、神威くん!!?」
慌てて、神威に駆け寄る季帆。

「ん!大丈夫!
目、覚めたから!
季帆ちゃん、なぁに?」

いつもの、神威だった━━━━━━
柔らかい雰囲気。
甘い声。

可愛らしい少年のような、神威。

「私、神威くんのこと、大好き!!」

「ほんと!!?嬉しいー!
こんなとこ見せちゃって、嫌われたかと……」

「嫌いにならないよ!
そんな簡単に、嫌いになれない!!
でも、暴力はやめよ?
ね?
私は何もされてないし、大丈夫だから!」

「うん!わかった!」
満面の笑みで笑う、神威。

「神威くん、帰ろ?」
「うん!
あ、乱磨」

「んぁ?」
「“今回だけは”許してあげる。
次はないからね」

「んなこと、わかってるよ。
つか!
俺の方が、やだよ!こんな痛いの(笑)」

後ろ手にひらひら振って、季帆の手を握って去っていった神威だった。
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