美しきハイスペ御曹司は、今日も彼女を溺愛する
「季帆ちゃん、一緒に食べよ?」

たこ焼きを1パック買い、近くのベンチに並んで座った二人。

「季帆ちゃん、はい!あーん!」
「━━━━!!!?/////え!?
じ、じ、自分で食べる…」

「えー!!やだー!」
「で、でも…は、恥ずかし…/////」

「いいでしょ?ほとんど、人いないし!
はい!あーん!」
「あ、あ…ん……」
恥ずかしそうに口を開け、思いきってパクッと頬張った季帆。

「美味し?」
「うん/////」

「フフ…僕にも、して?
あーん!って!」
「う、うん…
………あーん…」

「あーーん!
……………んー、旨い!!」
「うん…/////」


その後、ゆっくり公園内を手を繋いで歩く。

やっぱり季帆は桜を見上げて、その季帆を神威は見下ろして愛おしそうに見つめていた。

「━━━━━━神威?」
すれ違った女性から、突然声をかけられる神威。

「え?あ、知奈(ちな)だ」
感情のない、淡々とした声で言った。
(誰だろ?)

「久しぶりね、神威」
「うん」
「元気そう」
「うん」
「こちらは、彼女?」
「うん」

「“うん”以外、なんか言ってよ?(笑)」
「もういい?
僕達、急いでるんだ」

「え?あ、うん…」

(あ……)
知奈の表情が、微妙に切なく揺れた。
季帆は、それを見てしまう。

「季帆ちゃん、行こ?」
季帆に微笑む、神威。

「え?でも……」
「ほら!早く!」
戸惑う季帆を、半ば無理矢理引っ張る。


「━━━━━神威くん!」
「ん?何?」

「さっきの人……」
「あー、元・婚約者」

「え……」
「でも!親が勝手に言ってたことだよ?
僕は、そんな気さらさらなかったし、もちろん今は違う。
婚約者は、季帆ちゃんだもん!」

「そっか……」
「あ…ごめんね!
嫌だよね!?こんな話…ごめんね!」

確かに、気分はいいものではない。
でも、知奈の“あの”表情が頭から離れない。

きっと…………
知奈は“そんな気”だったんだろう。

知奈の表情が、それを物語っていた。


何故かフッと、高校生の頃明星が言っていたことを思い出した。

“恋愛って、必ずしも幸せじゃないよね?”と━━━━

季帆は、神威に出逢うまで“恋愛”をしたことがない。
だから、明星の言葉の意味がわからなかった。


『だって、もし…彼のことを好きな人がいたら、私はその人の悲しみの上で、幸せを味わってる』


「あぁ…そうゆうことか……」
ポツリと呟く、季帆。
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