美しきハイスペ御曹司は、今日も彼女を溺愛する
それからもゆっくり桜を見たり、腹ごしらえしたりして過ごす。

辺りは暗くなり、公園内の客層も変わってくる。
ライトアップもされ、宴会をする花見客やカップルも多くなってきた。

「季帆ちゃん、そろそろここを出て、何か食べて帰ろうよ!」
「うん」

「明日も大学休みだし、飲みにとか行っちゃう?(笑)」
「フフ…いいよ!」

居酒屋に向かう。
「━━━━━すみません。ただいま満席です。
そこにお名前をご記入してお待ちください」

「どうする?他のとこに行く?」
「でも、きっと何処も満席じゃないかな?
だから、待とうよ!
急いでるわけじゃないし!」

名前を書いて、椅子に座り待っていると…………

「え……神威?」

知奈がいた。
「知奈?なんで?」

「私、大学の友達と来てて……」

「…………季帆ちゃん、他のとこにしよ?」
神威は季帆の手を掴み、立ち上がる。

「え?え?」
季帆は訳がわからないまま、引っ張られる。

「神威!!」
季帆の手を握っていない方の腕を掴む、知奈。

━━━━━!!!!?
「僕に触るな!!!」

「あ…かむ…い……」
「神威く……」

凄まじく知奈を睨み付ける神威に、知奈と季帆が固まる。

「離して」
「神威…」

「離して!!」
「ご、ごめんね…」
ゆっくり、神威の腕を離す知奈。
そして神威は、季帆の手を引っ張り居酒屋を出た。

「神威くん!」
「あ…ごめんね!季帆ちゃん」
「違うの!
でも……女性にあんな言い方……」

「言ったよね?
僕は、そんな気なかったって。
親に利用されて、僕は見合いさせられたの。
しかも、高一の時だよ!?
知奈もね、僕のこと利用したの。
勝手に僕の婚約者って言い回って、雷雲のメンバーや昌磨達に自分のことを特別扱いさせてた。
最低でしょ?
…………だからね。
大っっっ嫌い!!!
知奈の顔見るだけで、虫酸が走る」

「神威くん…」

「もう…顔も見たくない」



“あいつが、御曹司ってことでどんな目に遭ってきたか”

乱磨の言葉が蘇った。

“汚ない大人に媚をうられ、親には利用されて、絶望してきた”


季帆は、涙が出ていた。

「え……季帆ちゃん?」
「う…っ…ぐすっ……」

「季帆ちゃん!?泣かないで?」
神威は、慌てて季帆の目元を拭い言った。

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