美しきハイスペ御曹司は、今日も彼女を溺愛する
「季帆さん?」

季帆は、神威の恐ろしさの中に“闇”のようなモノ感じていた。
そして同時に“孤独”のようなモノも。

確かに、こんな両親に育てられれば“闇”は生まれてしまうだろう。

どんなに裕福で何も不自由がなくても、これじゃ……幸せとはいえない。


神威が季帆に惚れたのは━━━━━

ごく普通で地味でも、温かい家庭で育ち、沢山の愛に包まれていた季帆に“憧れ”を持ったからかもしれない。

季帆を包む雰囲気が、神威の心を和ませ“安心”を与えたのだろう。


「━━━━━あの、あと一ヶ月程で臨月に入るので、忙しくなる前に会えたらなと思って……
お金…は…十分、足りてます」

「そう。
また、生まれたら言って。
出産祝いを神威に渡すわ。
あと、お腹の子もちゃんと保険に入れておきなさい。
良い学校に行かせて、将来は神威の後を━━━━━」

また、お金?

季帆は、少し目眩がしていた。

あぁ、わかり合えない。
━━━━━━そう思ってしまっていた。

どうしても、季帆には感覚がわからないのだ。



「はぁはぁ…また、張ってきた………」
ゆっくり帰路についていると、腹が張りだし季帆はその場でうずくまった。

近くの公園のベンチに腰かけて休憩していると、神威から電話が入った。

「もしもし…」
『季帆ちゃん!!?今、何処!?』

「◯◯公園。
神威くんの実家近くの」
『は?なん…で、そんなとこに…いるの…?』

季帆は、神威に事情を話す。
なんとかして神威の両親とも仲良くしたかったことや、神威の“闇”をぬぐいたかったことを。

「…………でも、無理みたい。
お義母様にとって、神威くんもこの子も、お金みたいな存在みたいだから。
私はただ、神威くんに家族の温かさを教えてあげたかった。
話せば、神威くんのご両親にもわかってもらえるかなって。
でも、根本が違うみたいで………」

『そうだよ。
そんな人間もいるんだ。
だから僕は、季帆ちゃんがいてくれたらそれでいい。
季帆ちゃんと、お腹の子と、季帆ちゃんの両親がいればいい!
大丈夫だよ?
僕は季帆ちゃんに出逢って、沢山の“幸せや温かさ”を貰ったから!
それで、十分だよ!』

「うん、うん……!」



季帆は“この孤独な旦那様を、私が幸せにしたい”と思っていた。

< 38 / 42 >

この作品をシェア

pagetop