美しきハイスペ御曹司は、今日も彼女を溺愛する
人気のない公園の端にある木の裏。
神威が駆けつけると、震える小さな背中があった。

服はぼろぼろ。
靴も、片方はいていない。

その後ろ姿を見ただけで、何があったか察する。
そして神威の胸は、凄まじい痛みを感じていた。

身体が冷えきって、頭に血が上り熱くなる。

怒りで身体が震え、奥歯をギリギリと噛みしめた。


「…………季帆…ちゃ…」
こんなに怒りに震えているのに、とても弱々しい声が出た。

ゆっくり振り返った、季帆。
季帆の可愛い顔は、恐怖と悲しみに歪んでいた。

「神威…く…」

「季帆ちゃ━━━━━━」
タタタと駆け寄り、抱きつく季帆。
神威も、力の限り抱き締めた。

「神威くん!神威くん!神威くん!」
「ごめんね!ごめん、守ってあげられなくて……!
もっと早く、僕が連絡してたら………」

腕の中で、季帆が首を横に振る。
「良かっ…た…か、むい…く━━━━」
ズルズルと季帆の力が抜けて、ずり落ちた。

「季帆ちゃん!!?」
季帆は、ホッとして気絶していた。

神威は、季帆を支えて頬に触れ撫でた。
「ごめんね、怖い思いさせて……
もう……絶対、傷つけさせないからね!」

そして、もう一度ギュッと抱き締めた。

神威の目が鋭くなり、雰囲気が闇の中のように黒く落ちた。


「僕の季帆ちゃんを傷つけた代償、奴等にきっちり払わせるからね━━━━━━!!!」



女子学生達は、カラオケ店にいた。
個室で、歌わず食事と酒を楽しんでいた。

「いい気味よ!」
「ふん!
これで、ちょっとはスッキリするわー(笑)」
「だねー!
ねぇ、また乾杯しよ~!」

「「「かんぱ━━━━━」」」


ガァァン!!!と物凄い音が響いた。
ドアを凄い勢いで開け、叩きつけた音だ。

女子学生達が音のする方を見ると、凄まじい憤怒の表情をした神威が立っていた。

「神威く……」
「ひっ…!!!?」
「な、な、な……」

そして神威の手には、髪の毛を乱暴に掴まれた男がいた。
顔は、見るのも気持ち悪いくらいに殴られて腫れあがっている。

神威は、掴んでいた男をまるで投げ捨てるように女子学生の方に放った。

「「「キャッ!!?」」」
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