謎多き旦那様の嘘、または秘密
記憶喪失
目が覚めると天井だった。知らない天井に数度瞬きして、横を見る。
どこだろう、ここ。
レースカーテンから差す光が朝日なのか夕陽なのかも分からず、腕をたてて手をついて上体を起こした。窓へ近づこうとすると、後ろから肩を押し戻される。
音も無く。
驚いて振り向くと、男性が居た。どこかで見たような、気がする。
「……何してる」
焦ったような表情を抑え込むような低い声。
どこかで聞いたような、気がする。
「今、何時かと思って」
「夕方の、三時だ」
「三時は夕方なの?」
「夕方じゃないのか?」
まあどちらでも良いか。