謎多き旦那様の嘘、または秘密
私はレンゲを持ったまま泣いていた。
目から零れ落ちる涙を左手首の包帯が吸っていく。
旦那様が近くに置いてあった箱ティッシュから一枚取り出し、私の頬に当てた。
「泣くようなことじゃない」
淡々と言った。
「悲しむようなことでもない」
じゃあ、この涙は一体何なのだろう。
やがて涙は止まり、私は卵粥を食べ始めた。
「記憶を失って混乱してるんだ。食べてよく眠った方が良い」
「眠るのはいっぱいしたのでは?」
「もっと寝ないと、怪我が治らない」
足と腕を見られ、私は小さく頷いた。それ以外の返事は出来なかった。