謎多き旦那様の嘘、または秘密

旦那様の言った通りの診断。私は本当に明日からオムライスを食べられるらしい。

それにしても、前回も来た時に思ったけれど、仲良いなあ。以前から知り合いだったのだろうか。

「何か思い出すことはありました?」
「あ……血が」
「血?」
「事故のときの記憶なんですかね。血がすごい手についてるのが頭に浮かんで」
「何をしている時ですか?」

何を。

掌へ視線を落とす。

「夕陽を見たときです」
「夕陽?」

あの時、何を考えたかを思いだす。

ベッドに落ちる陽射しの色が鮮明に赤くて……。

パンッと手を叩く音がして、そちらへと視線を向けた。

< 14 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop