謎多き旦那様の嘘、または秘密
旦那様の言った通りの診断。私は本当に明日からオムライスを食べられるらしい。
それにしても、前回も来た時に思ったけれど、仲良いなあ。以前から知り合いだったのだろうか。
「何か思い出すことはありました?」
「あ……血が」
「血?」
「事故のときの記憶なんですかね。血がすごい手についてるのが頭に浮かんで」
「何をしている時ですか?」
何を。
掌へ視線を落とす。
「夕陽を見たときです」
「夕陽?」
あの時、何を考えたかを思いだす。
ベッドに落ちる陽射しの色が鮮明に赤くて……。
パンッと手を叩く音がして、そちらへと視線を向けた。