謎多き旦那様の嘘、または秘密
旦那様が合掌している。祈りではなく、手を叩いた後なのは分かっていた。
「時間だ」
「あ? ああ」
訪問医のお姉さんは時計を見上げて小さく頷いた。
「じゃあまた来ます。ちゃんと食べて、よく眠ってください」
「はい」
旦那様と一緒に玄関を出ていく。一人部屋に残された私は、先程何をじっくり考えていたのかを忘れた。
足のギプスは一ヶ月後に取れる予定らしい。それまではずるずると引き摺って歩いている。
最近は階段もゆっくり下れるようになった。
絶対に旦那様はそれを見張っていて、自分が居ない時は下りてくれるな、と念を押されている。