謎多き旦那様の嘘、または秘密
思ったことに驚いて、顔を見上げた。
旦那様はこちらを見ていた。
「私、あの……」
言いたいことがある。言わなければならない。
「ここに、居て良いんですか?」
何故それを尋ねるのかも分からない。
何を答えてほしいのかも分からない。
「当たり前だ。ここは、君の家だから」
旦那様はティッシュを私の方へ差し出した。
頬へふわりと当たり、いつの間にか溢れていた涙を吸い取る。
「泣かなくて良い」
「でも涙が出ます……」
「止まれ」
「止まれない……」
ふ、と笑う声が聞こえた。
不思議と、涙は止まった。