謎多き旦那様の嘘、または秘密
私が壊滅的に料理ができないことは分かった。
他に分かったことは特に無く、それでも私はこの家では穀潰しだということは分かっていた。
「私って何の仕事をしてました?」
玉ねぎをみじん切りにした旦那様がこちらを振り向き、口元は見えないが、何かを言い淀む気配がした。
「そんな、一般的じゃない仕事を」
「町の、クリーニング屋だ」
「え、ああ、へえ?」
しっくりはこない。
自分がクリーニング屋で働いていたという想像も出来なかった。
微妙な私の反応に、何か思ったのか思わなかったのか、包丁を置いた。