謎多き旦那様の嘘、または秘密
彼は部屋を出ていく。階段を下りる音はしなかったけれど、上る音は聞こえた。コップになみなみと注がれた水。
お酒か、と突っ込みたくほどの量。それでも器用に渡してくるので、溢れる前に口をつけた。
ごくごく、と飲み始めたら止まらない。
結局すべて飲み干して、コップを下げた。
「ごちそうさま」
「食べたいものは何かあるか」
ぐう、とお腹の音が鳴る。
「今日は粥だけど」
「……卵いれてほしい」
「承知した」
彼は少し笑った、気がした。
本当はどうか分からない。
狐面を被っているからだ。