謎多き旦那様の嘘、または秘密
旦那様の手が頬を滑る。涙を拭ってくれていた。
私は自分で近くのティッシュを取る。
「もう一つある」
そうだ、それを聞かねばならない。
私は目元を拭って顔を見上げる。
旦那様は真っ直ぐ私を見ていた。
いつもこうして見てくれていたのかもしれない。
「僕と君は、夫婦ではない」
息の次に止まるのは、心臓だった。
「僕たちは赤の他人だ」
言われても、違和感は無かった。
それでも、その可能性を見ないふりをしていた。
目を逸らしていた、ずっと。