謎多き旦那様の嘘、または秘密
夢幻霧散



カードを渡す手は、私のものだ。
クリーニング屋のポイントカード。

「ここにお名前とご住所のご記入お願い致します」

平日の閉店間際に来るこのお客様は、家に洗濯機がないのかお金持ちなのか、毎週ワイシャツやらスラックスやらを持ってくる。

それならポイントカード作った方がお得です、と勧めると「じゃあ」と断る方が面倒みたいな感じで受けてくれた。

ペンを渡すと、少し止まった後、名前と住所を記入する。

書き終えて、一度こちらにカードが戻ってきた。

名前、山田太郎。
住所は一瞬で虚偽のものだと分かった。ここの番地は三丁目までしかないのに、五丁目が書かれている。
< 31 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop