謎多き旦那様の嘘、または秘密
やがて日が暮れる。夕陽の差すシーツをじっと見る。
赤い。
血よりもっと鮮やかで、絵の具では表現できないような。
「血の、色……」
血の匂い。その感触。誰かの体温。
掌を見る。何もついていない、すこし手荒れしているだけ。
それは記憶なのか、夢なのか。
ベッドに横になる。
五時のチャイムを聞きながら、私は眠り込んだ。
起きると朝だった。
枕元に昨日は無かった時計があったからだ。
「卵粥だ」
目が覚めたのはその匂いにつられて。
旦那様が横に持ってきてくれた卵粥にいそいそと起き上がる。