謎多き旦那様の嘘、または秘密
「あ、おかえりなさい」
「え」
「仕事から、おかえりなさい?」
狐面の旦那様は固まったまま動かない。
何か違っただろうか。とりあえずレンゲを持つ。
「ただいま、帰りました」
「ふふ、どうして敬語?」
思わず笑うと、旦那様は小さく肩を竦めた。
「君の真似だ」
声が少し笑っている。
それが嬉しくて私も笑った。
ずっとこうして来たんだと思う。
夫婦だから当たり前だけれど、こうして笑い合うのが奇跡みたいに嬉しい。
「不思議」
「何が」
「こんなに嬉しいのに、なんだか悲しくて」
旦那様がこちらを見る。