目は口ほどに物を言うと言いますが 〜筒抜け騎士様は今日も元気に業務(ストーカー)に励みます〜

 ウェイトレスを呼んで注文すれば、途端に手持ち無沙汰になってしまう。

 「こうして会うのも久しぶりね」とエマに話しかけようとしたとき、アメリアの耳にひそひそと押し殺した声が聞こえてきた。
 いくつかの好奇の色に満ちた視線も感じる。


 「あの方って、例の……」
 「そうよ、残念な容姿をしているから顔を隠して過ごしてるって聞いたわ」
 「まぁ可哀想に」
 「だからもうすぐ二十歳になるっていうのに、結婚の申し込みも一切ないらしいわよ」
 「コリンズ家も残念でしょうね」


 さすが流行最先端の人気店。
 流行りものが大好きな女性客が九割以上を占めるこのお店には、噂話が大好きなマダムやミーハーな若い令嬢たちが多くいるらしい。

 わざとアメリアに聞こえるように話すあたり、他人を蹴落として、見下すことが趣味なのだろう。
 
 そんな心の醜い人たちを相手するアメリアではなかったが、聞いていて気分のいいものではない。

 聞かないように意識するけれど、逆に耳に入ってきてしまう。下卑たくすくす笑いの声が、ぞわぞわと背中を擽る。

 ちくちく、心臓を針で刺されているような痛みに、せっかくの楽しい気持ちが萎んでしまった。


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