目は口ほどに物を言うと言いますが 〜筒抜け騎士様は今日も元気に業務(ストーカー)に励みます〜

 直接目と目が合ったら、その瞬間。
 意思なんて関係なく、そのひとの考えていることを読み取ってしまう。

 伯爵令嬢のアメリア・コリンズは、そんな能力を持って産まれてきた。

 それがアメリアだけの特別なものだなんて、幼い彼女は知る由もなかった。

 
 何の悪意もなく、考えていることを言い当ててしまって、突然バケモノ呼ばわりされたアメリアは酷く塞ぎ込み、それから人前に出る時は必ずベールを被るようになっていた。

 彼女の秘密を知るのは、家族と限られた使用人、そして唯一の親友・エマのみだった。

 アメリアが顔を隠し続けて、もう十年以上経った。
 十九歳になった今も変わらず、それは続いている。

 
 「コリンズ家の娘の素顔、知ってるか?」
 「なんでもとんでもない美人だって聞いたことはあるが」
 「ああ、おとぎ話のお姫様も逃げ出すレベルだってな」
 「いや、俺が聞いたのはこの世のものとは思えない程の醜女だって噂だぜ」
 「ギャハハ、それなら顔を隠してるのも頷ける」

 
 荒れくれ者の集う酒場では、下世話な話題がメインディッシュ。

 時折、アメリアの素顔が話題に上がることもあった。


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