目は口ほどに物を言うと言いますが 〜筒抜け騎士様は今日も元気に業務(ストーカー)に励みます〜
そんな彼女を見守る影がひとつ。
「素敵な出逢い」という言葉にショックを受け、真顔でぴしっと固まっている屈強な男。
彼こそが、侯爵騎士のルーカス・ウォード。
密かに重たい愛を抱え込んでいる爆弾だ。
普段のルーカスは常人である。
むしろ仕事にも真面目に取り組み、周囲からの評判も高く、美男で、エリートで完璧な騎士だった。
国内外問わず、結婚の申し込みが絶たないというが、彼は丁重にお断りするばかり。
誰か心に決めた女性がいるのではないか。
彼に想いを寄せる若い女性の間で、そんなことがまことしやかに囁かれている。
結論からいうと、その噂は真実だった。
「アメリア……素敵な出逢い……」
屋敷の塀に凭れかかり、項垂れて頭を抱えるこの男。
不審な者がいないかと見回りをしていたにも関わらず、自分が不審者に成り下がっているこの男こそ、アメリアのことになると、たちまち狂人に変貌する厄介な男だった。
今のルーカスは気が気でなかった。
業務中にも関わらず、人目を気にせずに固まってしまうぐらいには脳内が爆発していた。