婚約破棄されたい公爵令息の心の声は、とても優しい人でした

06.唯一の理解者

 晴れて(?)婚約者同士となった私達だったけれど、公爵様が「とりあえず一年間、様子を見て無理だと思ったら遠慮なく言ってほしい」と気を利かせてくれた。
 公爵様からの有難い提案に、内心ガッツポーズを決めていたのはもちろん私だけではない。

(父上、さすがだな。良い提案をしてくれた。この一年の間になんとしても婚約破棄したくなるように仕向けてみせよう)

 やたらと意気込む声が聞こえるけれど、私から婚約破棄するつもりはさらさらない。
 だけど彼の方からどうしても婚約破棄してほしいというのなら話は別。
 心の声ではなく、ハッキリとその口から言ってくれたらだけど。

 こうして、一年間という期間を心の支えにして私達の交際は始まった――。

◇◇◇

 最初の頃のヴィンセント様の印象は最悪だった。

 女性に対する嫌悪感からなのか、心の声は常に不満を垂れ流していた。

(なぜ俺がこんな事を……。なんでこいつは俺との婚約を引き受けたんだ? 確かに世の女性の中にはショタ専とかいう趣味を持つ者もいるらしいが……そういうタイプなのか?)

 別にショタ専じゃないわ。勝手にそんな趣味植え付けないでちょうだい。

 と、表面上では笑い合いながらも、彼の心の声との攻防戦は暫く続いた。
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