婚約破棄されたい公爵令息の心の声は、とても優しい人でした
ヴィンセント様の話を聞いた王太子殿下はバツが悪そうな顔で小さく舌打ちした。
「なんだ。つまらないな。今日は噂に聞いていたお前の姿を見るのを楽しみにしていたというのに」
この男、やっぱり嫌い。こんな男が次期国王とか……この国大丈夫かしら。
「まあ! カロル様! このお方は誰なのですか!?」
突如、王太子殿下の横から身を乗り出したのは、王太子殿下の『真実の愛』の相手、クリスティーヌ。
だが、彼女の視線は一直線にヴィンセント様へと向かっている。その瞳がみるみるうちにハートマークへと姿を変えた(ような気がした)。
王太子殿下はそんなクリスティーヌの様子を見てあたふたと慌てだす。
「クリスティーヌ! あいつには近付かない方がいい! 公爵令息は子供の様な無能に成り果てたという噂は聞いただろう!?」
「まあ! あのお方が公爵令息のヴィンセント様なのね! 噂通りとても素敵だわ! ぜひご挨拶しなくっちゃ!」
「あ! 待て! クリスティーヌ!」
王太子殿下の必死な声も聞こえていないかの如く、クリスティーヌは嬉しそうにこちらへ駆け寄ってくる。彼女の瞳にはもはやヴィンセント様しか見えていないようだ。
愛想を振りまき、ちょっと抜けてる可愛らしいその姿が男心をくすぐるのだろうか。
……っていうかこの子、大丈夫かしら。
あまりにもイケメンすぎるヴィンセント様を見て、隠れていた本当の姿が表に出ちゃっている気がする。面食いの男好きという……お姉様と同じ匂いがするわ。いや、お姉様に悪いから一緒にするのはやめておこう。
クリスティーヌはヴィンセント様の前で立ち止まると、花を散りばめた様な可愛いらしいドレスのスカートを摘んでペコリとお辞儀をする。
「初めまして、ヴィンセント様。私はクリスティーヌと申します」
クリスティーヌの挨拶に、ヴィンセント様はやはり無表情のまま返事を返す。
「ああ。話には聞いている。カロル王太子殿下の『真実の愛』の相手だとな」
「まあ……うふふ! 私の事を知っていてもらえて光栄ですわ」
嬉しそうに頬を赤く染めたクリスティーヌは、なぜか更にこちらへ歩み寄ってくる。
「でも、ヴィンセント様……」
意味深にそう呟くと、クリスティーヌはヴィンセント様に身を寄せ、私を抱き寄せている手とは逆の腕に絡みついた。
「真実は一つとは限りませんわ」
いや真実は一つにしときなさいよ。何を言ってるのこの子。
っていうか、何でこんな状況でヴィンセント様を誘惑出来るの? 私の姿が見えていないの?
……いや、見えてるじゃない。めちゃくちゃ好戦的な眼差しで私の方を見つめてきてるわ。
そう……ええ、いいわよ。やってやろうじゃないの。
ヴィンセント様が他の女性を拒めないのなら、代わりに私が蹴散らしてやるって決めてるんだから。
「なんだ。つまらないな。今日は噂に聞いていたお前の姿を見るのを楽しみにしていたというのに」
この男、やっぱり嫌い。こんな男が次期国王とか……この国大丈夫かしら。
「まあ! カロル様! このお方は誰なのですか!?」
突如、王太子殿下の横から身を乗り出したのは、王太子殿下の『真実の愛』の相手、クリスティーヌ。
だが、彼女の視線は一直線にヴィンセント様へと向かっている。その瞳がみるみるうちにハートマークへと姿を変えた(ような気がした)。
王太子殿下はそんなクリスティーヌの様子を見てあたふたと慌てだす。
「クリスティーヌ! あいつには近付かない方がいい! 公爵令息は子供の様な無能に成り果てたという噂は聞いただろう!?」
「まあ! あのお方が公爵令息のヴィンセント様なのね! 噂通りとても素敵だわ! ぜひご挨拶しなくっちゃ!」
「あ! 待て! クリスティーヌ!」
王太子殿下の必死な声も聞こえていないかの如く、クリスティーヌは嬉しそうにこちらへ駆け寄ってくる。彼女の瞳にはもはやヴィンセント様しか見えていないようだ。
愛想を振りまき、ちょっと抜けてる可愛らしいその姿が男心をくすぐるのだろうか。
……っていうかこの子、大丈夫かしら。
あまりにもイケメンすぎるヴィンセント様を見て、隠れていた本当の姿が表に出ちゃっている気がする。面食いの男好きという……お姉様と同じ匂いがするわ。いや、お姉様に悪いから一緒にするのはやめておこう。
クリスティーヌはヴィンセント様の前で立ち止まると、花を散りばめた様な可愛いらしいドレスのスカートを摘んでペコリとお辞儀をする。
「初めまして、ヴィンセント様。私はクリスティーヌと申します」
クリスティーヌの挨拶に、ヴィンセント様はやはり無表情のまま返事を返す。
「ああ。話には聞いている。カロル王太子殿下の『真実の愛』の相手だとな」
「まあ……うふふ! 私の事を知っていてもらえて光栄ですわ」
嬉しそうに頬を赤く染めたクリスティーヌは、なぜか更にこちらへ歩み寄ってくる。
「でも、ヴィンセント様……」
意味深にそう呟くと、クリスティーヌはヴィンセント様に身を寄せ、私を抱き寄せている手とは逆の腕に絡みついた。
「真実は一つとは限りませんわ」
いや真実は一つにしときなさいよ。何を言ってるのこの子。
っていうか、何でこんな状況でヴィンセント様を誘惑出来るの? 私の姿が見えていないの?
……いや、見えてるじゃない。めちゃくちゃ好戦的な眼差しで私の方を見つめてきてるわ。
そう……ええ、いいわよ。やってやろうじゃないの。
ヴィンセント様が他の女性を拒めないのなら、代わりに私が蹴散らしてやるって決めてるんだから。