婚約破棄されたい公爵令息の心の声は、とても優しい人でした
バチバチと私達が視線を交わす火花を散らしていると、
「クリスティーヌ嬢」
ゾッとする程の冷たい声が聞こえてきた。
そっとヴィンセント様の顔を見上げれば……物凄く嫌そうな顔でクリスティーヌを見下ろしている。
「俺からすぐに離れろ。君のようにベタベタと体に触れてくる女性は嫌いだ」
「え……? あ…………はい」
唖然としたままそう呟き、クリスティーヌはヴィンセント様の腕から手を離した。
そのまま後ろへ後ずさっていくその顔は、表情筋が消え失せたのかというほど何の感情も見られない。まさに、どんな顔をすれば良いのか分からない状態なのだろう。
だけど、それには私も激しく同意する。
まさかヴィンセント様がこんなにもハッキリと女性を拒絶するなんて。
抜け殻の様な姿で戻ってきたクリスティーヌの体を、王太子殿下はしっかりと抱き留め、心配する様に声を掛けた。
「大丈夫か!? クリスティーヌ! だからあれほどあいつには近寄るなと言ったのに!」
いや、今あなたの恋人、思いっきりうちの婚約者を誘惑していたの見てたでしょ? そこはきちんと咎めるべきじゃないの?
なんだろう。この人達には見たいものしか見えていないのだろうか。頭の中がお花畑すぎて逆に羨ましい。どういう心境なのか、心の声で一度聞いてみたいわ。
「やれやれ……。今日の建国記念パーティーはやけに賑わっているようじゃないか」
――その声、その気配に今度こそ会場内から音が消えた。
王太子殿下には全く興味を示さなかった人達も、さすがにハッと顔を上げ表情を引き締めた。
この会場に存在する全ての人間が注目するその人物はもちろん――国王陛下だ。
「クリスティーヌ嬢」
ゾッとする程の冷たい声が聞こえてきた。
そっとヴィンセント様の顔を見上げれば……物凄く嫌そうな顔でクリスティーヌを見下ろしている。
「俺からすぐに離れろ。君のようにベタベタと体に触れてくる女性は嫌いだ」
「え……? あ…………はい」
唖然としたままそう呟き、クリスティーヌはヴィンセント様の腕から手を離した。
そのまま後ろへ後ずさっていくその顔は、表情筋が消え失せたのかというほど何の感情も見られない。まさに、どんな顔をすれば良いのか分からない状態なのだろう。
だけど、それには私も激しく同意する。
まさかヴィンセント様がこんなにもハッキリと女性を拒絶するなんて。
抜け殻の様な姿で戻ってきたクリスティーヌの体を、王太子殿下はしっかりと抱き留め、心配する様に声を掛けた。
「大丈夫か!? クリスティーヌ! だからあれほどあいつには近寄るなと言ったのに!」
いや、今あなたの恋人、思いっきりうちの婚約者を誘惑していたの見てたでしょ? そこはきちんと咎めるべきじゃないの?
なんだろう。この人達には見たいものしか見えていないのだろうか。頭の中がお花畑すぎて逆に羨ましい。どういう心境なのか、心の声で一度聞いてみたいわ。
「やれやれ……。今日の建国記念パーティーはやけに賑わっているようじゃないか」
――その声、その気配に今度こそ会場内から音が消えた。
王太子殿下には全く興味を示さなかった人達も、さすがにハッと顔を上げ表情を引き締めた。
この会場に存在する全ての人間が注目するその人物はもちろん――国王陛下だ。