乱反射して落ち合おう【完】
「で、せっちゃん。なにがあったの?」

チー鱈の右サイドの鱈を剥がしながら、芳賀が訊く。

「食べ物で遊んじゃいけないんだよ」

「せっちゃんもやってたじゃん」

「わたしはいいの」

今度はわたしが鱈を剥がす。

「横暴」

芳賀が笑う。
だけどすぐに真剣な眼差しになる。

「なにがあったんだよ」

ああ、これはしらばっくれることができない。

わたしは観念して唾を飲み、空になった丼に視線をやる。
フリーズドライのネギが一欠片、縁にへばりついていた。

「……スマホがないのはね。
スマホをアパートに置いたまま、コンビニに行ったの。
ちょっと買い物行くだけだし、別にいいかなーと思って。
そしたらアパートに戻ったら、いたの」

顔を上げ、わたしは真正面から芳賀を見る。

いたってなにが? と言わんばかりに小首を傾げている。
これから話すことを、芳賀はどんな顔をして聞くだろう。
好奇心と不安が胸で混じる。
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