乱反射して落ち合おう【完】
――東京で、芳賀を見張っていてね。


芳賀とナツミの遠距離恋愛がスタートするとき。
芳賀と同じ大学へ進学するわたしに、ナツミはそう言った。

「わかった。なんかあったら、このヤリチンって言って殴っとく」と返すと、ナツミも芳賀もわたしも笑った。
ナツミの目の奥は笑っていなかった。

いくらお姫様でも遠距離恋愛となると不安だったのだろう。
ヤリチン王子の浮気のこともトラウマになっていたのかもしれない。

けれど、芳賀に見張りは必要なかった。

「彼女とかいるの?」と訊かれれば、芳賀は決まってうれしそうに笑い、「地元に、めちゃくちゃかわいい彼女がいるんだ」と周囲を白けさせた。

東京都と地元、電車で片道三時間半。
春休みはナツミが芳賀のアパートへ、夏休みと冬休みは芳賀がナツミのいる地元へ。
そうやって二人は関係を続け、今年の春で遠距離恋愛三年目へ突入した。

――このベッドで、芳賀とナツミはセックスしただろうか。

つい浮かんでしまった下衆(げす)な考え。

背中がぞわぞわしだして、寝返りしてみても止まらない。
困った。
羊の数でも数えてみようか。
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