君と空を見上げたい。
田中君は私の事を見もせずに席に着いた。
そして、荷物を置いて私と同じように教科書を開いている。

あの女装癖のある、変わりものの田中君と同じ事をしているだなんて、私はとても気が焦った。

そして、私はついに教科書を閉じ、何でもいいから作ろうと思った。
簡単でかつ失敗しない物なら何でもよかったのだ。
教科書の例に載っていた手提げ鞄なら作りやすそうだと感じたので、私は急いで型紙を作りはじめた。

一方、田中君は、噂通り考える人のようなポーズをとりながら教科書を見つめている。

何をそんなに考えているのかとても不思議だった。

まぁ、田中君も私と同じように何作ったらいいかわからないんだろなと、一人勝手な解釈をしながら私は作り終えた型を布に写した。

その時だ。

ギィーッ、と木の椅子を引きずる音がしたかと思うと、田中君が立ち上がっていた。
そして、彼は技術室の奥へ向かい、私の十倍くらいの量のベニヤ板を持って来て、ハイスピードで黙々と作業を始めだしたのだ。

下書きなんてほとんどせずに、電動ノコギリで板を切りまくっている。

最初は私に対抗しているのか、と思ってしまったが、そんなわけがなかった。

彼は私のことなんて一度も見ていなかったのだから。

あっという間に大量のベニヤ板を切った田中君は、疲れたのかその日はそれ以上動かなかった。
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